Kさんと、卒制と。

こんなこと言うのも難ですが、私の故郷は、意匠や芸術を志す人がほとんど出ないのです。
うちの大学にも、この県出身者は、学年に1人か2人いればいいほうなんじゃないかってくらい、いない。
そんな中、
一昨年、私が二年生のときまで、二学年上の油絵学科に、同じ高校出身の先輩が居た。
彼女は浪人して大学に入学したので年齢は私よりも4歳上で、高校は入れ違いだった。
でも、彼女の存在は、高校在学中から、美術の先生や部活の先輩から噂を聞いて知っていた。
部活の先輩曰く、
私と同じように添削指導を受けながら絵を描いて、高2から講習会参加のためにちょくちょく上京していたんだとかで。
ついでに、ものすごい美人。と。
先生は、相当お気に入りだったようだ。
じゃなきゃ、わざわざ何年か前に卒業した人の話なんて話さないでしょうに。
私は、面識も無かったし、ヘーえ、そんな人もいるんだーって感じで聞いてたけど。



それで数年後同じ大学に入って、気が付いたらその彼女が卒業制作展をやる番に。
自分の学科を見終わって、知り合いの作品を見終わって、あとどこ見ようかな、ってときにふと思い出した。
じゃあ、はじめまして、って感じに顔出してこようかな。
時間あるし行ってみようってノリで。
普段行き慣れない絵画棟。
ちょっとそわそわしつつ、まー、さらっと見て帰ろう、と。
ここかな?
入ってみた。
まず見えた、ファンタジックな色彩。
繊細な描写。
けだるさと強さの混じった不思議な空気感。
そんな作品が見えた。
へー、すごいの描く人がいるんだな。
ところでKさんのはどこだ?
ん?
んんんんん?????
・・・・・・。
…あら、これだわ!
へー、Kさんすごい!すごい!
と、ひとりで感激。
てか、
こんなにすごい絵を描く人だと思わなかった!
せっかく2年かぶってたのに、知らなかっただなんて、勿体ない!
そこにはKさんらしき美人さんが座っていたんだけど、なんか話しかけられずに、ノートに名前と「同じ高校出身です!」みたいなことを書いて去ってしまった。
うーーー。
そのときも話しかければよかったのに、って今思う。
いやー、そのときは衝撃でかくて頭真っ白状態だったから・・・



後日、その作品は油絵科で最優秀賞になった。



それから一年半くらいして、今年の夏に美術の先生に久しぶりに会って、先生の主催する絵画サークルの展示を見に行ったとき、Kさんの卒業制作も出展されていた。
彼女は卒業後、作家目指して描き続けているという。
やっぱりそうだよなー。
と思った。
同時に、
高校のとき、自分と同じ境遇にいて、同じ大学に入って、似た立場にいる人なのかなと思っていたけれど。
そんなんじゃない。
なんか、
この人、いわゆる「ひとにぎり」に入る人なんじゃないかと思う。
美大、って言っても、その後制作で食っていける人なんて、ひとにぎりしか居ないのだ。
その、輝くひとにぎり、が、Kさん。
私は、就職活動とか通して、
やっぱり、
自分は天才でもなく、凡人なんだ、と、痛感したばかり。
Kさんと私、ぜんぜん違う。
田舎が一緒で、勝手に仲間意識持ってたが。
私って、小さいな…
ま、そんなことを考えた夏休み。



で、今日iPHOTO開いて卒業制作の展示方法とか考えている時、
Kさんの作品の画像が出てきた。
なんか、
自分も卒制、がんばろう、って思えた。
真摯に作品を作り続けているKさん。
その作品は、自分の創り上げたい像が全力で出し惜しみなく描かれている。
私も、自分の良いとするもの、魅せるべきもの、伝えたいこと、そして自分の考えを全力で作品に置き換えたい。
やりすぎるくらいに、やりたい。
これから2ヶ月半どう過ごすか、イメージが固まった気がする。